テキストサイズ

禁断兄妹

第68章 罪と罰③~灰谷の告白~



「私は萌さんに言いました。私がついてるから大丈夫だと、萌さんは病院へ行くだけで、プライバシーも守られると。私はこの事件をうやむやにするつもりなど、これっぽっちもありませんでした。

 でも萌さんは‥‥さっきもお話しましたが、誰にも言わないで欲しいと、私に懸命に訴えたんです。
 『知らない人についていった私が悪い、それに灰谷さんが助けてくれたから、何もされてない』そう言っていました。

 最終的な行為は、すんでのところで免れたかも知れません。しかし男が萌さんの服を裂き、身体に触れていたのは、事実です。精液までかけられていたんです。どんな辱しめを受けたか、わからない。
 奴らには裁きを受けさせるべきですし、それに、萌さん一人を狙った計画的な犯行としか思えない節があり、根本的な問題を解決しなければ再び襲われる可能性もある。泣き寝入りするのは逆に危険だとさえ思いました。

 誰にも言わないで欲しいと繰り返す萌さんを、私は心を鬼にして説得しようとしました。お互いに必死で、ほとんど言い合いに近かったと思います。

 しかし、最後に萌さんが叫んだ『柊が傷つく』という一言に、私はハッとして‥‥
 萌さんは『お願いだから』と言って、堪えきれないようにわっと泣きだして‥‥

 あれが萌さんの本心だったのだと、思います。

 一ノ瀬さんを傷つけたくない‥‥本当にただその一心だったんだと、思います。

 それまで私の前では兄と呼んでいたのに、柊と名前で呼んだこと‥‥二人だけの世界があるのだと、それを守りたいのだと、言葉にできない想いをぶつけられた気がしました。

 目が覚めるような感覚でした。
 この時私はやっと、萌さんの気持ちを理解できたように、思います‥‥」




ストーリーメニュー

TOPTOPへ