禁断兄妹
第70章 謙太郎と手紙
「萌、ここにはお兄ちゃんにいてもらって、上で少し休もう。
お兄ちゃん、お父さんのことお願いね」
「ああ」
小さなお葬式ができる
お家のような建物
私はお母さんに手を引かれて
階段を上った。
途中で振り返ると
並ぶ椅子の一つに
ぽつんと腰かけているお兄ちゃん
長い足を組み
じっと前を向いて
お父さんの写真を見ている。
ガラスのような
瞳
───落ち着け萌、怖いのはわかる、でも俺がついているから、俺と一緒に乗り越えて───
不意に
病室でお兄ちゃんが言った言葉が
甦った。
「‥‥っ」
突き上げる
言葉にならない感情
口を強く押さえて
無理矢理飲み込んだ。
「萌大丈夫?気持ち悪いの?
さ、お母さんにしっかり掴まって。大丈夫、ゆっくり歩こう」
お兄ちゃんの心が
泣いてる
お兄ちゃんだってすごく悲しんでいる
それが手に取るようにわかるのに
寄り添うことが
できない
内側から痛いほど胸を叩くこの感情が
何なのかわからない
怖い
ごめんねお兄ちゃん
ごめんなさい