禁断兄妹
第70章 謙太郎と手紙
「そして私はすぐに二つめの頼まれごとに取り掛かりました。
巽さんが連れて来て欲しいと言っている謙太郎さんが、世界的に活躍されているモデルのKENTAROさんだと聞いた時は、驚きました。
私でも知っているような、とても有名な方ですから。
巽さんは謙太郎さんの電話番号も住んでいるところも知らないので、まずは所属事務所へ直接電話するしかない、という話でした。
そんなすごい人と連絡が取れるのか、取れたとしても会いに来てくれるのか、私は不安でした。
でも巽さんは、『タッチャンがナツのことで、どうしてもケンに会いたがっている』と伝えることができれば、可能性はあると言っていました。
暗号のような伝言です。
巽さんは、とてもデリケートな問題だから、一ノ瀬巽という名前や夏巳さんの旧姓である日崎の名字を事務所の方へ漏らさないようにしたい、と言っていました。
あなたと巽さんと夏巳さんがどういうご関係なのかも、教えてはくれませんでした。
でも呼び名から察するに、三人は共通の友人なのだろうと、私は理解しました。
一昨日から所属事務所様をはじめ、色々なところや人にお電話させてもらいました。お騒がせして本当にすみません。
やっと日本語が話せるマネージャーさんと繋がった時に、あの暗号のような言葉と私の携帯番号をお伝えしましたが、折り返しの電話が来るか、私は半信半疑でした。
でもあなたはこうして電話をくださった。
びっくりしました‥‥本当にありがとうございます。
でも‥‥巽さんは亡くなってしまって‥‥今日が告別式です。
あと一歩。あと一歩のところだったんですが‥‥とても残念です‥‥」