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禁断兄妹

第70章 謙太郎と手紙



「『手紙を謙に返して、そして謙に聞きたいことがある』と巽さんは言っていましたが、亡くなってしまった今、あなたに何をお聞きしたかったのかは、もうわかりません。

 私は今お話したような必要最低限のことしか聞いてないんです。
 本当は、知りたかったです、とても。
 でも巽さんが何も聞かないでくれと言うなら、何も聞かないでおこうと、思ったんです。
 
 ただ、巽さんは、私に二つの頼みごとをした日、こんなことを言っていました。


 『真実が明らかになることで、傷つく人間がいるかも知れない。
 俺もその一人だ。
 でもその真実を必要としている人間もいるんだ。救うことができるかも知れないんだ。

 とにかく謙と話さないことには、何も始まらない‥‥』


 謙太郎さん、この言葉を聞いて、どう感じましたか?
 あなたはもしかしたら、巽さんが何を聞きたかったのか、わかるんじゃありませんか‥‥?


 ‥‥すみません。
 そうですよね。巽さんにしかわからない。
 もう永遠にわからない‥‥

 だとしても、この手紙をあなたに返すと巽さんが言っていたことは、確かなんです。

 だからこの手紙は、あなたに受け取って頂きたいと、思うんです」

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