禁断兄妹
第70章 謙太郎と手紙
「真実を必要としている人がいて、救うことができるかも知れないって、巽さんは言ってましたけど、あなたが亡くなってしまった今、心を閉ざした謙太郎さんに何をどう伝えればいいのか、私にはわかりません‥‥
私がこの手紙を読んで、再び謙太郎さんにアプローチするのも、違う気がします。
何も聞かないでくれと言ったあなたの想いと、焼いて欲しいと言った謙太郎さんの想いは、やっぱりこうすることでしか、叶えられない気がします‥‥」
カサコソと
微かな音。
「三人は三角関係だったんでしょうか。
謙太郎さんの言葉から、そんなことを感じました。
切ない想いを秘めた三角関係‥‥なんて、勝手な想像ですね。
‥‥これでよし、と」
そのまま
お父さんの顔を眺めているんだろう
しばらくしてから
窓を閉める音がして
コツコツ
離れていく靴音
二階へ上がっていくそれを
じっと聞きながら
抑えきれない衝動に
身体が
燃えるように熱くなっていく。
パタン、と二階のドアが閉まった音が聞こえるとすぐ
私は弾かれたように起き上がり
走った。
お父さんが眠る箱
窓を開けて
敷き詰められたお花が少しだけ乱れているところに
夢中で手を入れた。
あった
抜き取った手紙をポケットに収めて
お花を直して窓を閉めて
外へ出るドアへ
細く開けた隙間から外へすり抜けて
音を立てないようにドアを閉めた瞬間
足と手が
がくがくと震えて
その場にしゃがみこんだ。
「はあっ、はあっ、はあ‥‥っ」
やっちゃった
どうしよう
ごめんなさいごめんなさい
でも
だって
わからない
わからないけど
焼いちゃいけない
それだけは
わかるの