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禁断兄妹

第71章 君が方舟を降りるなら


時間は



「そうだよ萌ちゃん。萌ちゃんの心と身体が必要なだけ時間がたてば、自然に思い出すんじゃないかな。無理しなくていいんだよ」


「先輩、たかみちゃん‥‥ありがとう」


「萌の気持ち、すごくよくわかったわ。
 そんな風に考えてくれてたのね‥‥ありがとうね」


お母さん

涙目の笑顔


「私にとっては、萌の存在自体が、巽さんとの想い出なのよ。萌はただ存在してるだけで、私の喜びなの。
 だからね、萌は萌らしく、自分の思うように生きていていいのよ。
 もし思い出せなくても、それはそれで、いいのよ」


みんなの暖かな言葉に

ありがとう
本当にありがとう

お辞儀する気持ちで
深く頷いて

顔を上げた時に
お兄ちゃんと目が合った。

ずっと私を見ていたんだと思う
その瞳がゆっくりと一回まばたきしてから
すうっと細くなって
口元に
ふわりと広がった微笑み

そしてお兄ちゃんは
その場にあった椅子に静かに腰をおろすと
窓の外へ視線を送った。


お兄ちゃん

遠くを見つめる凛とした横顔に
何故か
泣きたくなる


「あら‥‥柊ったら萌が心配になって座るところずらしちゃったのね」


「どこ座ったっていいだろ別に」


「うふふ、最初からそこに座ってれば良かったのに」


「泣いてたと思ったらもう笑ってるのか」


お母さんとお兄ちゃんのいつものやり取りに
ほっと空気が和らぐ。


「よっし、萌ちゃん。では改めて、七月の部活のスケジュールから話をしていこうね」


「うん。お願い」


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