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禁断兄妹

第71章 君が方舟を降りるなら



「えっ、萌、今、音大に行きたいって言った?」


「萌ちゃん音大目指してたの?!」


お母さんとたかみちゃんのびっくりした声
タカシ先輩も目がまん丸

自分の口から飛び出した言葉に自分でびっくりして
頭が真っ白になって

泳いだ視線が
お兄ちゃんの視線とぶつかった。

息をのむような
時が止まったような
お兄ちゃんの表情

みんなの視線が私に集まっているのに
続く言葉が出てこない。

さっきの言葉はどこから出てきたんだろう

でも

でも私

音大に行きたい


「一ノ瀬は音大に行きたいのか‥‥?」


タカシ先輩の優しい問い掛けに
頷いた。


「今やってるのはフルートだよな。
 ‥‥フルート奏者になりたいのか?」


もう一度頷いた。

何故か
涙が出た。


「一ノ瀬が本気なら、俺が力になれることも、あると思う。
 個人レッスンの先生を紹介することとか、勉強の仕方とか」


「‥‥はい‥‥」


「うん、よしわかった。わかったよ一ノ瀬。泣かなくていいんだよ」


次々と溢れてくる涙
拭いながら
頷いた。


「お母さん初めて聞いたからびっくりしちゃったわ、萌。
 そうなのね、音大に行きたいのね。フルートの勉強をしたいのね」


「うん‥‥フルートが好きなの‥‥フルート奏者になるのが、夢‥‥」


頭はまだ混乱したまま
込み上げる気持ちを
そのまま口にした。

タカシ先輩はお母さんに向き直って


「僕にできることなら何でも相談に乗らせてもらうので、ぜひ前向きに考えてあげてください。もし音大への進学を考えるなら、ご家族のサポートは不可欠だと思います」
 

「私の気持ちはもう決まってるの。
 応援するわ萌。全力でサポートする!その道のエキスパートのタカシ君もいるし、すごく頼もしいじゃない。鬼に金棒よ。
 ねえ?!柊!」


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