禁断兄妹
第72章 君が方舟を降りるなら②
「あ、そういえばお母さん、」
タカシ先輩はお兄ちゃんと話がしたいと言っていたけど
何か話したのかな
何か知ってる
そう聞いたら、お母さんはクスッと笑った。
「萌も気になってたのね。実はお母さんも気になってたんだけどね‥‥」
私が倒れてしまったことで
結局お兄ちゃんとタカシ先輩が二人で話すタイミングは
なくなってしまったみたい。
「そうなんだ‥‥」
「タカシ君とたかみちゃんが帰る時、お兄ちゃんは病院への電話とかでバタバタしてたから、私だけでお見送りをしたの。
その時タカシ君ね、『柊さんにもよろしくお伝えください、またお目にかかりたいと』って言ったのよ。どうしても話したいことがあるのね、きっと」
「‥‥」
タカシ先輩は
お兄ちゃんと何を話したいんだろう
───心配するな───
お兄ちゃんの唇の動きが
ふっとよみがえって
心配なんてしてないよ
してない
「ねえ萌。タカシ君って、とてもいい子よね。しっかりしてるし、誠実だし。こんな素敵な人と付き合ってたなんて萌ってすごいなあって、思ったわ」
お母さんはすっかりタカシ先輩が気に入ったみたい。
「別れた理由がわからない元カレっていう微妙な人だけど、これからも先輩後輩として、良い関係を築いていったらいいんじゃないかしら。萌の夢に力を貸してくれる頼もしい協力者だと思うわ」
「うん‥‥」
私も
そう思っていた。
タカシ先輩は小さい頃から音楽の道を志してきた人だから
まさにその道の先輩。
個人レッスンのことや勉強の仕方
具体的にどうしたらいいのかを知っている先輩がいてくれるのは
とても心強い。
──努力の積み重ねだけが、階段を作るんだ。
‥‥頑張りなさい。応援してるよ。心から、応援してる──
階段を
作りたい
その為にも
タカシ先輩の力が
必要だと思う。