禁断兄妹
第72章 君が方舟を降りるなら②
翌日
私はたかみちゃんに電話をした。
もうすっかり体調は良くなったこと
心配をかけてしまったお詫びと
部活や学校のことを教えてくれたお礼と。
たかみちゃんは私の無事をとても喜んで
冬休みはまだ数日あるからしっかり頭と身体を休めてね、と言ってくれた。
「タカシ先輩にも電話してあげてね。
帰り道に『一ノ瀬大丈夫かな、病院に行ったほうがいいんじゃないかな』とかって、ずっと心配してたから」
「うん、ちゃんと電話するつもり。本当心配かけちゃった」
「あとね‥‥昨日萌ちゃんが倒れた時に、お兄さんが『ごめんな触るぞ』って言ったんだけど、それって覚えてる?」
「あ、うん‥‥」
ドキン、と
心臓が反応する。
「先輩が気にしてたの。どういう意味だろう、触られたりするのが嫌なのかなって」
そうなんだ
先輩
「萌ちゃんさ、半年分の記憶が飛んじゃったことを私に電話で教えてくれた時に、何故か大人の男の人が苦手になったってことも言ってたじゃない?だからなんだろうなって私はわかってたけど、先輩は知らないからさ。それとなく教えてあげたらいいかも」
「そうだね。ちゃんと話しておく。
大人の男の人には近づくのも苦手で‥‥身体が大きいと特に怖く感じるの。
でもタカシ先輩は平気な感じで、逆に安心できるって言うか」
先輩はあまり背が高くないし、細身
それに私と同じ中学生だし
「うふふ、今の萌ちゃんの発言を聞いたら、先輩どう思うかなー」
「えー?」
「男として見られてない!って残念に思うかも知れないけど、男だけど自分は大丈夫なんだ、安心してくれるんだって、嬉しいんじゃないかな。
やっぱりさ、先輩は萌ちゃんのこと、まだ好きみたいだから」
「う、うーん、そうかなあ‥‥それはちょっと、困るような‥‥」
どぎまぎしながらそう言ったら
たかみちゃんは笑って
「先輩はね、萌ちゃんのそういう気持ちもちゃんとわかってるよ。
萌ちゃんが音大に行きたいって言ったことをとっても喜んでてね、『一緒にキャンパスを歩けるかなあ』なんて言うから、恋人としてですか?って、思わず突っ込んだの。
そしたらね、『正直に言うと、そうだな』って。『でも今は一ノ瀬の夢を応援する一人として、できる限りのことをしたいだけだよ』って」