禁断兄妹
第72章 君が方舟を降りるなら②
「そうなんだ‥‥」
タカシ先輩らしい言葉
「だから、変な期待させちゃうかもって気を使う必要はないと思う。
先輩は恋愛感情抜きでも、ちゃんと力になってくれるよ」
「うん‥‥そうだね。
色々迷惑かけちゃうかもしれないけど、お言葉に甘えて、力を借りようと思う」
たかみちゃんとの電話を終えた私は
すぐにタカシ先輩にも電話をした。
「一ノ瀬?もう大丈夫なのか?!」
たかみちゃんが言っていた通り
とても心配してくれていたことがわかる声
「あの、ご心配をおかけして本当にすみませんでした。体調はもうすっかり回復しました」
頭痛や吐き気もないし
お医者様も問題ないだろうと言ってることを話したら
ハラハラ不安そうだった先輩は落ち着いてきて
確かに声も元気そうだなって
やっと安心してくれた。
「なんともなくて良かったよ。ホント良かった。
いっぱい食べて、ちゃんと寝て。しばらく無理はするなよ」
タカシ先輩は
きっと色々気になってることがあるはずなのに
何も聞かない。
一歩ひいてくれる気遣いが
私と先輩の間に
日だまりのような空間を作る。
「あの、先輩‥‥
兄が私に触れる時にごめんなって言ったことについて、少し話してもいいですか‥‥?」
怪我をして意識が戻ってから
大人の男の人が苦手になってしまったことを
タカシ先輩に話した。
どうしてなのかよくわからないけど
あまり深く考えたくはないこと
タカシ先輩は男だけど大丈夫なことを
素直に話した。
「そうだったのか‥‥
話してくれて、ありがとうな」
静かに聞いていた先輩は
真面目な声で
「そういう状態なら、通学の時とか大丈夫か?もし大人の男性が近くに来たら怖いんじゃないか?」
「‥‥」
実を言うと
私もそれは
気になっていた。
怪我をしてからほとんど外へ出ていない
病院へ行く時はお母さんと一緒だからいいけど
通学は一人。
「もし一ノ瀬が良かったらだけど、一緒に登下校しようか?」