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禁断兄妹

第72章 君が方舟を降りるなら②


タカシ先輩は
自分の家は私の家より学校から遠いから
ついでに寄ればいいだけだし、と


「西川に話しても二つ返事で引き受けるだろうけど、西川の家は反対方向だから」


そう
たかみちゃんにお願いすることを考えたりもしたけど
反対方向だから申し訳なくて言えないなって


「一ノ瀬のお母さんと柊さんも心配してるだろうし、俺で良ければとりあえず初日だけでも迎えに行くよ」


同じ方向とは言っても
私の家に寄る為には時間も手間もかかる
でも
思いきって


「はい‥‥ではお願いします。ありがとうございます」


「うん、じゃあそうしよう。音大のこととかも話せるし、ちょうどいいよ」


良かった

登下校のことは気になっていたから
思わずほっと息を吐いた。


「確かに母も兄も心配していて‥‥兄は女性のボディーガードを雇うことを考えてたくらいなんです」


「ボディーガード?!」


「付き添いみたいな感じで、一般の人でもそういうのがあるみたいなんです。
 そこまでじゃないから大丈夫って断りましたけど‥‥」


お兄ちゃんは私が一人で登下校することを心配していて
お母さんと一緒に行きなさいとか
ボディーガードが嫌なら自分が離れて歩くとか言うから
ちょっと困っていた。


「柊さんは一ノ瀬の男性恐怖症みたいな状態を含めて、体調面を心配してるんじゃないかな」


「はい‥‥それはわかるんですけど、少し大げさな気がして」


「柊さんには柊さんの考えがあるんだと思うよ。
 一ノ瀬のことをとても大切に思っていることは、昨日の言葉や行動からもよくわかったしね」


タカシ先輩は大げさだとも言わなかったし
笑ったりもしなかった。

新学期の初日は三日後
迎えに来てくれる時間を決めて先輩との電話を終えると
私はお母さんに電話の内容を話した。


「えー!タカシ君が送り迎えしてくれるの?」


お母さんは驚きながらも
タカシ君がそうしてくれるならとても安心する、と嬉しそう。


「お礼も言わなきゃだし、その日は私も下におりていくわ。
 お兄ちゃんにも早速メールしておかなきゃ」


「うん‥‥」


お兄ちゃんは
どう思うだろう

お母さんと同じように
安心してくれるかな

胸に浮かんだお兄ちゃんは
切なそうに
微笑んだだけだった。

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