禁断兄妹
第72章 君が方舟を降りるなら②
そして三日後
三学期と
タカシ先輩との登下校が始まった。
家まで送ってくれたことは
お付き合いをしていた時に何度かあったけど
毎日一緒に登下校をするのは
初めて
元彼と登下校するなんてやっぱり変かな、とか
学校のみんなはどう思うだろう、とか考えたりもしたけど
隣を歩くタカシ先輩はすごく自然体で
変に意識していた自分が恥ずかしくなった。
『進学や個人レッスンの相談にのっていて、方向が同じだから一緒に通学することにしただけ』
タカシ先輩は興味津々の部活のみんなにさらりと説明して
それが本当に堂々とした爽やかさだったから
みんな半信半疑ながらも
タカシ先輩がそう言うなら、と納得したみたい
私も友達から聞かれたら
内心ドキドキしながら
タカシ先輩の言葉をそのまま使わせてもらった。
タカシ先輩はモテるし人気者だから
初日からみんなざわざわ
こういうのが苦手だから
お付き合いを始めた時も内緒にしていた
でもタカシ先輩は
『ざわつくのは最初だけ』と言っていて
その言葉通り
別に付き合っている訳じゃないらしい、と
周りの反応は段々と落ち着いていった。
「みんなの興味が俺達の関係に集中して、逆に良かったな。
この先よくわからないことがあっても、そうだっけーで乗り切れるさ」
確かに
みんなからの質問がタカシ先輩と私の関係に集中したことで
去年のことが話題にのぼることはほとんどなかった。
たかみちゃんとタカシ先輩が冬休みに教えてくれた情報はとても役に立ったし
たまによくわからないことを聞かれても
そうだっけー、で乗り切ることができた。
「学校の勉強にはついていけてるか?わからないところがあったら、教えるよ」
「えーと、実は数学がピンチかもです‥‥」
「教科書ある?どの辺り?」
学校の行き帰りは
タカシ先輩と音楽や勉強のことを話しているとあっという間
男の人が近くに来そうになったらさりげなく守ってくれるから
安心できる。
記憶は戻らないし
大人の男性は怖いままだけど
それでも大丈夫なんだって
思えるようになった。
今を受け入れる勇気みたいなもの
それが生まれたのは
お母さんから
お母さんとお父さんの恋物語を聞いたことが
とても大きかったと思う。