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禁断兄妹

第72章 君が方舟を降りるなら②



『───夏巳さんの告別式の夜に、私達は初めて身体を重ねた。その一夜で萌を身ごもったの。

 この関係を、何て呼ぶのか‥‥

 巽さんはね、不倫をしていたと、はっきり萌に伝えたわ。
 俺達は不倫関係にあった‥‥そして萌が生まれた‥‥そう言っていた』


お母さんとお父さんが隠し続けてきた真実

それはお兄ちゃんを深く傷つけて
家出同然に家を飛び出して
大学までやめてしまったほど

どうして一人暮らしを始めたのか
どうして大学をやめてモデルのお仕事を本格的にするようになったのか
不思議に思いながらも触れていなかったことの答えが
そこにあった。

『俺はもう全てを許している』

お兄ちゃんは穏やかな声でそう言ったけど
そう思えるまで
どんなに辛かったか
苦しかったか

私はいい
たとえ不倫という言葉がついたとしても
大好きなお母さんとお父さんの子供であることに変わりはないし
お母さんは生きて目の前にいる

でもお兄ちゃんには‥‥

お兄ちゃんの気持ちを考えると
胸が張り裂けそうに痛かった。

でも
私に向けてくれているその顔を見ることは
できなかった。


流れる血は
半分しか私と同じじゃない


半分知らない男の人───


怖い
無意識にそう思って

違う
そんなこと思っちゃいけない

慌てて打ち消して
でも
お兄ちゃんの顔は見れなくて
そんな自分が嫌で
涙が
零れた。


この話を初めて聞いた時の自分がどう感じたのか
わからないけれど

今の私には
お母さんとお父さんを責める気持ちは
ひとかけらもなかった。

ただただ驚いて
胸が激しく揺すぶられて

とめどなく涙が零れた。

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