禁断兄妹
第72章 君が方舟を降りるなら②
タカシ先輩の息遣いが響くリビング
先輩はもう何も言わず
何度か深呼吸をした後
わかりました、と
歯軋りするような声を振り絞った。
「柊さん‥‥僕は悔しいです。
でも、あなたと本音で話すことができて、良かったです。ありがとうございました」
「うん。どういたしまして」
お兄ちゃんは
静かにカップを口に運ぶ。
冷めてしまったな、と呟く横顔に
タカシ先輩が
「もう僕に帰って欲しいでしょうが、帰りませんよ。
夕飯もしっかり頂きます、おかわりだって遠慮なくさせて頂きます‥‥っ」
宣言するかのような言い方に
お兄ちゃんが
笑った。
「やめろよ‥‥吹き出すところだった」
「僕は本気ですし、柊さんと友好的な関係を築きたいという気持ちも、本当ですから」
呆れ顔のお兄ちゃん
タカシ先輩は悪戯っぽく微笑んだ。
そして玄関のドアが
開く音
リビングに入ってきたお母さんが
立ち上がっているタカシ先輩を見て
「あら、タカシ君どうしたの?帰っちゃうの?」
「いえ、いますよ。いさせてください!」