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禁断兄妹

第73章 君が方舟を降りるなら③



「背が高くてガタイがいいとか、鋭い目をしているとか要は言っていたけど、それって今思うと、あの男そのものなんだよ。
 でも実家が霧島組だってことは隠してた頃だからね‥‥由奈はマジで誰のことだか全然わかんないって笑い飛ばして、それで話は終わったんだけど、本当はわかっていたはずだよ‥‥」


全身全霊で
命がけで

思いがけず
胸を突かれる感覚


「こんなことは言いたくないけど要の能力は本物だから‥‥あの男が全身全霊で由奈を守っていたのは真実なんだと思う。
 組員としての忠誠心を越えた愛情があったんじゃないかな‥‥」


俺は頭をかきむしるように
髪をかきあげた。

あの男の心情などわかりたくもない
わかってたまるか

和虎は無言の俺を気遣うように
どんな理由があったとしてもあの男に肩入れする気は全くない、と前置きした上で


「完全な逆恨みなんだけど、命がけで守ってきた大切な存在を傷つけられた怒りとか悲しみとかを柊兄にも味わわせたくて、標的に萌を選んだんだろうね。
 『同じ目にあわせた』っていうのは、そういう意味なんだろうね‥‥」


命がけで守ってきた大切な存在を
傷つけられた怒りとか悲しみ


───萌に‥‥俺の萌に何しやがった‥‥?!許さねえ、絶対に許さねえ!!ぶっ殺してやる!!───


───それはこっちのセリフだクソガキ!!───


痛み分け
なのか

俺もあの男も

気が狂いそうなほどの痛みを
互いに与えあって

今も
苦しんで

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