禁断兄妹
第73章 君が方舟を降りるなら③
その為にも携帯の電話番号は変えないよ、と言う声には
しみじみとした愛情が溢れていた。
「そうだな‥‥俺は由奈のことをどうこう言える立場じゃないけど、あいつには幸せでいて欲しい」
突然の結婚は強引にさせられた感が否めず
何があったのか
わだかまりが残る。
由奈
由奈がいてくれなければ
今の俺はなかっただろう
荒みきっていた俺を許し
癒し
信じてくれた女
「全身全霊で守っていたっていうあの男は、由奈の結婚のことをどう思ってるのかな‥‥」
独り言のように和虎が呟いた。
あの男の心情などどうでもいい
本当にどうでもいいけど
祝福してはいないだろうと
思った。
「さて‥‥俺の話はこれでおしまい。
次は柊兄の話を聞かせてよ。ニューヨーク行き、本決まりになったの?」
「ああ‥‥何を言おうとしてたか若干忘れたな」
それまでの会話の余韻に心を残しながら
俺は来月中旬からニューヨークへ行き
三ヶ月ほど滞在する予定だと和虎に伝えた。
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