禁断兄妹
第74章 君が方舟を降りるなら④
俺はリビングを出た。
靴を履く俺の前で
ドアが開いて
「ただいまーっ」
美弥子
「あっ、柊も今帰ってきたの?」
無邪気な美弥子
たとえ短時間だとしても
何故二人を置いて出掛ける
それにお前風邪気味だったんじゃないのか
「下に和虎を待たせてるんだ。もう行くよ‥‥じゃあな」
「え?」
美弥子の横をすり抜け
ドアの外へ出た。
「え?柊?」
背中に美弥子の動揺した声
「萌のそばにいてやってくれ。早く」
追いかけてきそうな気配を突き放すように
振り返らずに答えた。
乗り込んだエレベーターの中
壁に背中を預け
息を整えながら
この気持ちには
覚えがある
そう
父さんを突き飛ばし
怪我をさせ
この家を飛び出したあの夜
父さん
母さん
もう誰もいない
何故死んだ
俺を
残して