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禁断兄妹

第74章 君が方舟を降りるなら④



結局
三人はマンションから出てきて

萌と美弥子は女だけでタクシーに乗り
和虎はタカシをこの車に同乗させ
その上
ちょうどバイト上がりだった灰谷まで
車に乗り込んできた。


「お見送りは賑やかなほうがいいじゃない。それにさ、柊兄が留守の間はヒロも力になってくれるんだからね。感謝しなきゃ」


和虎は灰谷をヒロと呼び、親しくしているらしい。
俺と灰谷は互いを牽制しあっているけど
和虎が繋ぎ役になっていた。


「ヒロは萌だけの力になりたいかもだけどね」


「美弥子さんのお力にもなる」


会話に加わる気にもなれなくて
流れる車窓を見ている俺に
和虎が囁く。


「これから始まるんだからね柊兄。孤独感に溺れてちゃダメ」


「‥‥」


わかってる

萌への愛は永遠だし
夢は必ず実現させてみせる

だけど

みじめで

両手まで広げて
慌てて下ろした自分が

ただ
みじめで

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