禁断兄妹
第74章 君が方舟を降りるなら④
「ここでいいよ」
国際線の出発ロビー
俺が足を止めると
みんながなんとなく円になった。
萌は子供のようにまだべそをかいていて
その両側に美弥子とタカシ。
「萌。さっきはごめんな」
精一杯優しい声で語りかけた。
萌は俯いたまま
力なく首を振る。
みんなはしんと静まって
見守るように萌の言葉を待っていたけど
萌は顔も上げず黙ったまま
「タカシ君も。すまなかったね」
「いえっ、僕が悪かったんです。申し訳ありませんでした」
「みんなも。ここまで見送りに来てくれてありがとう。気をつけて帰ってくれ」
大人として
最低限言うべきことは言った。
もういい
もう行こう
背を向けようとした俺に
「柊君っ!」
美弥子が
思い切ったように声を上げ
一歩前へ出た。
「あの‥‥柊君あのねっ、私‥‥」
「人前で君付けはやめろって、何度も言ってるだろ」
何をそんなに力んでるんだ
ささくれだった心が
ため息をつく。
「私‥‥妊娠してるの‥‥っ!!」
「‥‥え‥‥?」
間の抜けた声は
俺だけじゃなく
全員
「私、巽さんの子を授かったの。巽さんの赤ちゃんがお腹の中にいて、今三ヶ月なの‥‥っ!!」
「ええーっ?!」
全員の驚きの声が
フロアに響いた。