禁断兄妹
第74章 君が方舟を降りるなら④
そっと美弥子を解放すると
「お母さん!!」
今度は萌が
美弥子に抱きつく。
「お母さんの中に赤ちゃんがいるの?!もうここにいるの?!」
「そうよ。萌はお姉さんになるのよ」
「信じられない!!嬉しい!!おめでとうお母さん!!おめでとう!!」
萌は赤く濡れた瞳を輝かせて
本当に嬉しそうに笑って
その眩しいほどの笑顔を
そのまま俺に向けた。
「お兄ちゃん‥‥私達の妹か弟が、生まれるんだって‥‥!」
「ああ。まさに奇跡だ‥‥」
これが奇跡じゃなくて
何なのか
さっきまでの失望
怒り悲しみ
全てが一瞬で浄化された。
全てが許され
光に包まれたような
感覚
「萌、母さんのことを頼むな。元気な赤ちゃんを産めるように、しっかり守ってあげてくれ」
「うん。何でもお手伝いする!だって私、お姉さんになるんだもの‥‥!」
「萌は妹だと思う?弟?」
「えー!どっちでも可愛い!あ、名前は?ねえ名前はいつ決めるの?!」
俺と萌の間にあったぎくしゃくとしたわだかまりは
いつの間にか姿を消し
俺達は笑顔で言葉を交わし
見つめあい
喜びを分かち合っていた。
それが泣きたいくらい
嬉しくて
嬉しくて
「和虎、灰谷、タカシ君。
俺がいない間、美弥子と萌を頼む。女二人の生活で、それに身重では何かとあるだろう。力を貸してくれ」
心から言えた。
わかった、勿論、まかせてくれと
口々に頼もしい言葉が返ってきて
胸が熱くなる。
俺は
灰谷、タカシと自然にハグし
和虎は
良かった、本当に良かったと泣きながら
すがりつくように俺を抱き締めた。
「ありがとうな和虎。いってくるよ」
ぽんぽんとその背中を叩く。
「これからが始まりだ。俺は光になれる。そうだろ?」
「うん、うん‥‥っ」
さあ
そろそろ時間だ