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禁断兄妹

第76章 エム・オー・イー



「柊、このペンダントのこと、本で読んだよ!」


お兄ちゃんの膝の上で
翼がお兄ちゃんの首にかかっているペンダントに興味を示す。

お兄ちゃんは『俺のことは柊と呼ぶように』と翼に言い聞かせたから
翼は柊と呼んでいて
私もその真似をして翼には『萌ちゃん』と呼ばせている。


「もう字が読めるのか?」


「難しい字は萌ちゃんに読んでもらってる」


本というのは
最近発売されたお兄ちゃんのスタイルブックで
写真は全て和虎さんが撮影している。

ライフスタイルやファッションについてインタビューに答えているページがあって
漢字が読めない翼に読んでとせがまれ
何度も読んであげているうちに私は暗記してしまったほど。

『好きな場所は?』『海。泳がないけど』とか
『好きな季節は?』『冬。雪を見るのが好きだから』とか
お兄ちゃんの素顔が垣間見れる。

いつも首にかけているコインのような丸いペンダントについても書かれていて

『いつもしているペンダントについて教えて』『日本を出てきた時から、お守り代わりにつけている』
『ロケットペンダントのようだけど、中に入ってるものは?』
『永遠の愛』


「『永遠の愛』が入ってるんでしょ?」


「ああ、そうだよ」


「それって開くの?ねえ、中見せて!見たい!」


会った時は勿論写真や映像でも何度か目にしているペンダント
実は私もそれを読んだ時から
すごく心惹かれていた。


「残念。開かないんだ」


「えー?壊れてるの?翼が開けてあげるよ」


お兄ちゃんはペンダントを大事そうにシャツの内側に入れて
興味津々の翼の目から隠す。


「壊れて開かないんじゃなくて、時が来るまで開かないんだ」


「えー?どうして?」


「そうだな‥‥
 翼は『季節』ってわかるかい。春の次には夏が来て、秋が来て冬が来る。
 夏の次に春が来て欲しいと思っても、絶対に来ない。でも、待っていれば必ずまた春は来るんだ。
 それと同じで、来るべき時が来れば、自然に開くのさ」


「よくわからないよ」


「ふふ、それも同じだ。わかる時が来れば、自然にわかる」


お兄ちゃんは
まだ小さな翼にも大人に話すように話をする。
それは私が小さい時も
同じだったように思う。


永遠の愛

それは時が来るまで
ずっと
ペンダントの中で眠っているんだろうか

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