禁断兄妹
第76章 エム・オー・イー
はしゃぎ疲れた翼が眠たくなって
お母さんが寝かしつけにリビングから出ていって
「静かになったな」
「さて、大人の時間ね。あ、ワイン飲む人ー」
お兄ちゃんと和虎さんと灰谷さんと私で
改めて乾杯。
「萌と乾杯できるようになるとはねー。初めて会った時、まだ十三歳だったのよ。時の流れの速さに驚愕するわ」
「和虎も老けるはずだよ」
「柊兄もね」
「中学生の萌さんも愛らしかったですが、本当にお綺麗になられて」
「灰谷、萌を勝手に褒めるな」
四人でたわいのないお喋り
男性は触られたりするのがダメなだけで
お喋りしたりするのは平気
特に
和虎さんとは今や女子トークができる仲だし
灰谷さんのお店にはよくケーキを買いに行っていて
気軽にお喋りができる仲
お兄ちゃんが日本にいない間
私達家族をたくさん助けてくれた二人
タカシ先輩と同じく
心から尊敬できるかけがえのない存在
そして
お兄ちゃんは
昔から変わらず
私の理想の人
「本当萌は綺麗になったわねー。二十歳だし成人した女性の魅力ね。モテるでしょ」
「そんなことないです」
「大学で男性との飲み会に誘われたりしませんか?」
「たまに誘われますけど、レッスンと勉強と翼の世話でいっぱいいっぱいなので、断っています」
「そうですか」
「ヒロ、安堵感丸だしやめて」
「いや別に‥‥タカシ君は元気ですか?」
「はい。コンクールで忙しいみたいですが、お元気です」
「彼氏では、ないんですよね」
「ヒロいいわねーぐいぐい聞くわねー」
「彼氏ではないです。タカシ先輩にもお伝えしているんですけど、誰ともお付き合いする気はなくて‥‥今はフルートと翼が恋人です」
「そうですか。日々が楽しくて充実しているなら、それが何よりですね」
「そうそう。萌が幸せならそれでいいのよ」
周りの友達からは
どうして彼氏を作らないの、とか
恋愛してみたら、とか言われるけれど
和虎さんも灰谷さんもお兄ちゃんも
そういうことを言わないから
このままでもいいんだって
気持ちが楽になる。