禁断兄妹
第76章 エム・オー・イー
萌が帰った後
俺はママの洗い物を手伝いながら
自分に何ができるかを
考えていた。
余計なことをするつもりはない
だけど今この時に
俺にも
裏方としてできることがあるんじゃないのか
柊兄が大切に育ててきた七年間
それを守りながら
俺にも
できることは
「ねえママ」
「なあに」
「要の電話番号って、今も残してある?」
「ええ、勿論」
ママは携帯を手に取ると
手早く操作して俺に差し出す。
「かけてもいい?」
優しい顔で黙って頷くママ
何も言わずにそっと俺の横を離れる。
俺は通話を押した。
七年連絡を絶っている要
この店には来なくなった
風の噂で海外に転勤したとも聞いた
電話番号も変わっているかも───
「‥‥はい」
懐かしい声が
聞こえた。
「おヒサ、要」
要
何かが胸の奥から湧き上がって
飲み下した喉を熱くする。
「何時だと思ってる」
苦笑いの混じる声
懐かしい
変わらない
「要。ヒントをくれ」
俺が何を聞きたいのか
お前ならわかるはず
「クイズ番組にでも出てるの?」
要はふふっと笑って
少し黙って
「‥‥手紙だよ」
「手紙?」
「『メカイ』でも『テカニ』でもない。『手紙』だ」