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禁断兄妹

第77章 手紙を奪還せよ



「懸命に俺に訴えかける萌さんが、今も脳裏に焼きついている。
 あれから俺はその三文字の疑問を、心の片隅にずっと持ち続けていたんだ」


ヒロの声に熱が帯びる。


「それが『手紙』だとわかった今、俺の想像はこうだ。
 萌さんは何かとても大事な手紙をあの男に奪われた。車内に萌さんの鞄の中身が散乱していたことからも、それは伺える。計画的に奪われたのか偶然なのかはわからないが。
 とにかく萌さんはどうしてもそれを取り戻したかったんだ。あの恐ろしい現場から一刻も早く逃げることより、それを取り戻すことの方が大切だったんだ。とても大事な手紙だったはずだ」


「とても大事な手紙、か‥‥」


極限状態の萌が
どうしても取り戻したかった手紙
それは誰が書いて
誰に宛てた手紙なのだろう


「和虎。その手紙を取り戻そう」


「え?!」


「その手紙は、きっと萌さんと一ノ瀬にとって、必要なもののはずだ」


ヒロの瞳が燃えていた。


「取り戻すって‥‥相手はヤクザだぞ、下手に関われない。
 それにもう七年経っているんだ。捨ててしまっているかも知れない」


「捨ててはいないはずだ」


「どうしてわかる」


「捨てているなら、要という男は、それをヒントにはしないはずだ。
 きっと彼には手紙が見えていて、それを取り戻すことが鍵だとわかってるんだ。だからこそ、俺達にヒントとして提示したはずだ」


「なるほど‥‥」


「彼の能力は本物で、信頼できる男だと言ったのは和虎、お前だ。彼の情報を信じて動いてみよう。
 勿論萌さんと一ノ瀬の迷惑には絶対ならないように、あくまで慎重に、水面下で動こう」


ヒロは
作戦会議だ、コーヒーを淹れてくる、と
厨房へ消えていった。

俺は若干呆気にとられながら
その逞しい背中を見送った。

なんだよ頼もしいじゃん
ヒロ

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