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萌を襲ったあの男から七年前の手紙を取り戻す
しかも萌と柊兄に絶対に迷惑をかけることなく

不可能にも思えるミッション
でも
やる価値はあるはず

俺には一つ
閃いているアイディアがあった。


「俺は霧島組の組員の電話番号を、今も残してあるんだ。
　そいつはあの男の側近で、由奈の結婚を教えてくれた男だ。
　ヤクザには違いないが、まともに話ができる男だった。
　七年前に話した時は、二度とかけてくるな、かけて来たら霧島組が動くぞって言われたけど、あれから七年だ。
　間違い電話を装って、かけてみようと思うんだけど、どうだろう」


「なるほど。面白い」


「勿論出ないかもしれない。その時は別の方法を考えよう。
　でも出たら‥‥
　『あっ、高木ですがキリタニさんですか？え？違う？あれ、あっ、あの時の霧島組の方ですか。間違ってかけちゃったみたいですね、すみません‥‥』
　みたいな感じで、向こうの反応を見る。直接的に接触するより安全だ」


「‥‥わざとらしさの極みだな」


ヒロがぷっと吹き出した。


「しかもキリタニって‥‥芸が細かいな」


「間違い電話なんだから、霧島に近い名前のほうがリアリティがあるじゃん」


「ふふっ、わざとらしさの中にもリアリティか」


ずっと難しい顔をしていたヒロ
笑顔が見れてほっとする。


「そうそう、ヒロは少し肩の力抜いて。ガチガチに力むと、うまくいくものもいかない」


「そうだな。‥‥で？」


「名乗れば俺のことを思い出すと思うんだけど、無関心に電話を切られたらそこで終わり。次の方法を考えよう。
　怒られたりまずい空気なら、間違い電話なんだから、すみませんでしたって即こちらから切る。で、次の方法を考える。
　でももし、話を続けられそうな空気なら‥‥俺の直感で会話を進めて、手紙を取り戻す方法を探る」


「いいと思う。それでいこう」


「まずは、間違い電話作戦。決行は、明日だ」