禁断兄妹
第77章 手紙を奪還せよ
「あの‥‥由奈さんはお元気ですか。お子さんとかいるんですか」
「子供はいない。それが用件か?」
「そういう訳じゃありませんけど、元気かなと思って」
「さあな。元気かどうかは知る術がない」
「知る術がないって‥‥そちらがご実家ですよね。たまに遊びに帰ってきたりしませんか」
「しないな」
本当だろうか
「極道の世界はよくわかりませんが、実家に遊びに帰ってきたりしないんですか?お盆とかお正月とか。
普通はよくあるように思いますけど」
男は薄く笑って
「親身になって気遣ってるのか?」
嫌味な言い方だが
七年前俺が言った言葉を
この男は覚えていた。
「ええ。親身になって気遣ってくれる人がこの世に一人もいなかったら、むなしいですからね」
男の笑いは
少し愉快そうな響きに変わった。
「ちょうどいい機会なので、一つお聞きしたいことがあるんですが」
「なんだ」
いける
いくしかない
自分の感覚を信じて
「七年前、一ノ瀬柊の妹が襲われた際に、大事な手紙を持ち去られたようで」
「ほう‥‥」
「今もお持ちなら、返して頂きたいんです」
隣にいるヒロの体に
ぐっと力がこもるのが分かった。