テキストサイズ

禁断兄妹

第77章 手紙を奪還せよ



「組長との間に入ってとりなせと?
 ありえんな。キレられて俺の身が危うい」


組長?


「七年前に一ノ瀬柊の妹を襲ったのが、今の組長ということですか?今更どうこう言うつもりはないので、教えてください」


「そうだ」


七年の間にあの男は組長になっていたのか
ハードルが更に上がった。


「とりなすと言うか、会わせて欲しいと言うか。返して欲しいと頼みたいんです」

 
「どう逆立ちしてもお前が会って話をできるような方じゃない。
 それに、手紙とやらを今もお持ちだとしても、お前ごときに返せと言われて返すと思うか?」


確かにそうだが
粘るしかない


「確かにそう思いますが、返してもらう為に、何か良い方法を教えてもらえませんか」


「これが本当の用件か。訳ありだな」


「お願いします」


男は少しの間黙った。


「もしも‥‥」


「もしも?」


「嬢が直接組長に会って頼んだら、返すかもしれない」


「由奈が‥‥?」


「嬢は嫁いでからこの七年間、一度も霧島組に帰ってこなくてな。会長も色々働きかけたが、一度も顔を見せない」


「一度も?!」


だから元気かどうか知る術がないと言ったのか


「それは由奈の意思ですか?それとも籠の鳥なんですか?」


「‥‥まあ、どちらの要素もあるだろうな」


男の声に
僅かに感傷的なものが混じった。


「手紙とやらを取り戻したいなら、組長の前に嬢を連れてきてみせろ。それが万に一つの方法だ」


「わかりました。由奈が住んでいる場所の住所を教えてください」


男が口にした住所を
俺は紙に書き留めた。


「先代と組長と若の三世代で同居している。細心の注意を払って、嬢だけに接触しろ。
 言っておくがこの電話の内容と俺の名前は絶対に出すな。出したら手紙は永久に戻らないと思え」


俺の返事を待たずに
電話は切れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ