禁断兄妹
第77章 手紙を奪還せよ
「由奈さんに直接手渡せるような状況なら、霧島組も苦労はしてないだろうしな」
「うん。きっと会うことが難しいんだよね」
「とりあえず、通行人を装ってこの家を見に行ってみないか。どんな家なのか、周囲の状況とか、何かわかることもあるだろう。
もし由奈さんがちょうど出てくれば、話すことができるかも知れない」
「そうだね。賛成」
次なる作戦は
通りすがりの通行人作戦
決行日は
ヒロの店の定休日である次の月曜日と決めた。
「早く行きたい。うずうずするよ」
俺はごろりとフローリングの床に寝転がり
天井を見つめた。
「‥‥電話で話したさっきの男はさ、きっと二人を会わせてあげたいんだろうな」
「二人って?」
「由奈と組長」
霧島組として打てる手は全て打ってみたはず
それでも状況が変わらない中
一般人の俺に希望を見出してると言ったら
言い過ぎだろうか
『親身になって気遣ってくれる人がこの世に一人もいなかったら、むなしいですからね』
七年前も今も
そう言った俺を信用し
一縷の望みを託しているんじゃないか
「昔‥‥七年以上前、要と由奈が会った時があってさ」
俺はヒロに
要と由奈が会った時のことを話した。
「『私には何が見えますか?』って聞いた由奈に、要は、『ボディガードのような男が見える。文字通り彼に守られて君がよく見えない』『全身全霊で、命がけで君を守ってるよ』って言ったんだ。
要には、今は組長になったあの男のことがそんな風に見えていたんだ」
ヒロは男らしい眉を強く寄せ
じっと俺の話に聞き入る。
「全身全霊で、命がけで守っていた由奈が、七年間一度も霧島組に帰ってないんだよ。きっと心配してるし、会いたいだろうと思う」
「そいつが会えない苦しみを感じてるなら、それは萌さんを襲ったことへの罰だ。同情する気はない」
「俺も同情する気はないよ。でもさ、なんだか切なくてね」
忠義心を超えた愛からの報復
その暴挙は諸刃の剣となって
二人を引き裂いた