禁断兄妹
第77章 手紙を奪還せよ
それから四日経った月曜日
俺達は由奈が住む都内の住所を目指し、俺の車で出発。
天候は曇り。
風はないが冷え込んでかなり寒い。
まずは車で通り過ぎながら様子を窺い
その後どこかに車を止めて
徒歩で家の周辺を歩こうという作戦。
組員も出社というのかは知らないが
旦那が家にいなさそうな午後二時を狙って到着した。
老舗暴力団である神楽組
たどり着いたそこは下町の風情が残る町
「あれじゃない?」
「だな」
通りを一本入ったところに
いかにもな
コンクリート造りの建物が見えてきた。
高く堅牢な門扉の中に三階建ての豪邸
住所からも間違いない。
俺は怪しまれない程度に減速
助手席のヒロが観察係だ。
「家の壁にいくつか防犯カメラがあるな。あの大きなシャッターのところから車が出入りするんだろう。雰囲気的に駐車スペースは地下にあるのかも知れない」
通り過ぎてしばらくしてから折り返して
再び観察。
今度は俺の側にその家がある。
防犯を重視しているのであろう外観は
高く厚い門扉とアイアンのゲートがいかつく
無機質な表情
ここで由奈が暮らしているのかと思うと
胸が痛くなる。
「その辺のスーパーまで歩いて行くって感じの家じゃないよね。どこでも運転手付きの車で出掛けてそう。自分の家の地下から乗って、帰ってくる感じ」
「俺もそう思う」
俺達は駅前の駐車場に車を停め
今度は徒歩で。
由奈の家の近くには古い商店街があるから人通りがあり
長身の男二人連れは多少目立つかもしれないが
まあ大丈夫だろう。
由奈の家が見えてくると
ちょうど中から車が出てくるところ
スモーク貼りの高級車で
由奈か、とハッとしたが
運転手らしき男が見えただけで後部座席は見えない
そのまま車は行ってしまった。
「由奈が乗ってたかもなぁ」
だとしたら大きなチャンスを逃してしまったかも知れない
俺がそう言うと
「三世帯だから住人が多い。
由奈さん以外の家族が外出したなら、そのほうが好都合なこともあるだろう」
「さすがヒロ、前向き」