禁断兄妹
第77章 手紙を奪還せよ
俺達は家の裏手に回る道へ。
裏手にも高い塀がぐるりと続いていて
正面にはなかったバルコニーがこちら側には二階と三階についていて
二階のバルコニーには物干し竿が見えた。
「こっちからは、多少生活感を感じるね」
「ああ。バルコニーの窓から、中が見えるといいんだが。
三世帯住宅だと、出入りのしやすい一階が祖父母というイメージだから、由奈さん夫婦は二階か三階に住んでるんじゃないか」
「なるほどね」
下から見上げるだけでは中が窺えない
何かいい方法はないだろうか
「あ」
「どうした」
俺達が今歩いているこの細い道路
由奈の家の裏手にはこの道路を挟んで寺らしきものがあり
その敷地の道路沿いには立派な大木が立ち並んでいる。
「これに登ってみよう。ヒロは見張り役。目立たないようにね」
言いながら俺は木に登り始めた。
もし神楽組に見つかれば大ごと
閃いたら素早く実行だ。
落ちるなよ、と背中にヒロの声
木登りは小学生以来だけどボルダリングの経験がある
案外スムーズに二階の高さまで登れた。
常緑樹だったことが幸いし
生い茂る葉が俺の体をちょうど隠してくれる。
「由奈。いるならバルコニーに出てきてくれ。頼む」
念じるように呟いた。
バルコニーまで十メートルくらい、いやもう少し離れてるだろうか
ミラーガラスらしく部屋の中は見えないが
バルコニーに置かれているのは土だけの鉢植えやバケツ
畳んだ段ボールなどが端のほうに寄せてある。
とりあえず三階も見てみよう
登るにつれ木の幹も枝も細くなっていき
折らないよう慎重さが必要になってくる。
真冬だというのに額から汗が流れた。
こんなこと霧島組にはできないだろう
見つかれば組同士の争いに発展しかねない
一般人の俺だからこそできることだ。
見えてきた三階のバルコニーには
たくさんの鉢植えが置いてあった。
冬なのに綺麗に花が咲いていて
そのほとんどが由奈が好きだったピンク色
俺は
ここだ、と確信した。
この花の手入れをしてるのは由奈に違いないが
長時間ここで張っている訳にはいかない
せいぜい数分
頼む
出てこい由奈
突然窓が開いた。
「!!」
現れたのは
由奈だった。