禁断兄妹
第77章 手紙を奪還せよ
「由奈!!」
小声で叫んだ。
びくっと体を震わせ
辺りを見回す由奈
ニットのロングガーディガンをゆったりと羽織り
片側に流した長く美しい黒髪
すらりとした白い手足
はっと目を引く美貌は変わらない
「こっちこっち!!」
由奈の瞳が俺を捉えた。
大きく見開かれ
両手を口に当て
信じられない、というように茫然と立ち尽くしている。
「由奈、俺の電話番号覚えてるか?電話できるか?」
由奈は首を横に振る。
「携帯は持ってるか?」
首を振る。
「今、ちょっと外に出てこれるか?」
首を振る。
泣いてる。
「わかった、じゃあ、これを読んでくれるか?それならできるか?」
俺は胸ポケットに入れていた手紙を取り出し
掲げて見せた。
もし手渡せた時の為にと
昨日書いてきた手紙
由奈は頷いた。
涙でくしゃくしゃの表情
「よし」
俺は封筒から便箋を取り出し
震えそうになる手で紙飛行機に折った。
そして
由奈のいるバルコニーへ
そっと飛ばした。
紙飛行機は吸い込まれるように
両手を広げる由奈の腕の中へ
由奈は紙飛行機を抱き締めて
崩れ落ちるように
膝をついた。
「由奈、必ず助けるからな!!」
長居はできない
見つかれば由奈にとってもまずいことになる
俺は急いで木を降りて
「行くぞヒロ、撤収だ」