禁断兄妹
第77章 手紙を奪還せよ
帰りの運転はヒロが代わってくれた。
俺は由奈の姿を思い出すたび涙が込み上げてきて
運転にならなかったからだ。
「携帯もなくて、ちょっと外に出ることもできなくて‥‥どういうことだよ。信じられないよ」
「籠の鳥というのは、どうやら本当のようだな」
涙を流しながら首を振っていた由奈
泣けてくる。
確かに綺麗だった今も
でも
由奈が持っていた天性の輝き
命の躍動感とでもいうべきエネルギーが
何も感じられなかった。
儚げな立ち姿と青白い肌には
長い年月をかけて塗り込められた孤独と諦念が
透けて見えるようだった。
「手紙には、なんて書いたんだ?」
「元気か、とかそういうことと‥‥七年前に柊兄の妹が霧島組に襲われた時に大事な手紙が奪われて、それが柊兄と妹にとって本当に大切なものだから、どうしても取り戻したいから、組長に直接会って返してくれるよう頼んでくれないかって‥‥あとは俺の電話番号とか」
「そうか‥‥」
由奈に状況を伝えることはできた
でも
今の由奈に
組長に会いに行く自由はあるのか
自分の意思で籠の中にとどまっている、というより
とどまらざるを得ない
そう感じた。
許された場所だけを運転手付きの車で行って帰ってくるだけの生活なんじゃないか
由奈にはあの小さなバルコニーだけが
外の世界なんじゃないか
俺は由奈に残酷なことを頼んでしまったんじゃないか
「ごめん、だめだ、俺だめだわ」
シートを倒し頭からコートを被った。
涙が止まらない