禁断兄妹
第78章 恐れずに進め
「萌ちゃん、朝だよ!起きて!あけましておめでとう萌ちゃん!」
部屋のドアを叩く翼の声で
目が覚めた。
あのまま私は
いつの間にか眠ってしまったみたい。
今日は元旦
楽しいお正月のはずが
それどころではない気分
どうしよう
ハイテンションの翼に無理やり手を引かれ
とりあえずリビングに行くと
ゆったりとソファに腰かけているお兄ちゃんがいて
「萌ちゃん連れてきた!」
「おはよう萌。翼に起こされた?」
お兄ちゃんが艶然と微笑む。
自信と余裕に満ちた
いつもの笑顔。
「う、うん」
「あけましておめでとう、でしょ、萌ちゃん!」
「あ、あけましておめでとう」
「ふふ。あけましておめでとう。今年もよろしくね」
翼は私の手を離すと
お兄ちゃんに駆け寄って膝の上によじ乗る。
「ねえ柊、萌ちゃん起きたし三人でカルタする!」
「いいよ。負けないよ」
「待って翼、私まだ顔も洗ってない」
「早く洗ってきて!」
「ゆっくりでいいよ、萌」
どんな顔をしてお兄ちゃんと会ったらいいだろうって思ってたけれど
良かった
翼に助けられた。
お兄ちゃんと会えるのは年に数回
今回だってずっと心待ちにしていた
変にぎくしゃくして距離を置きたくない。
あれは私が中学一年生の頃
大人の男性に強い恐怖感を感じるようになったことから
お兄ちゃんに対しても
普通に接することができない時期があった。
ぎくしゃくしてしまい普通に話すことも目を合わすこともできなくて
壁を作って避けて
大好きなお兄ちゃんが傷ついているのがわかるのに
自分ではどうしようもできなくて
すごく辛かった。
その反抗期のような状態は
お母さんの妊娠という電撃発表を聞くまで続いたけれど
本当は
その前
バルコニーから
両手を広げたお兄ちゃんを見た瞬間に
私の心のわだかまりは
解けたのだと思う。
私がどんなに嫌な子でも
駄目な子でも
お兄ちゃんは見捨てずにいてくれる
私を信じて愛してくれるんだと
深い愛情を
感じた。
今も思い出すたびに
胸が熱くなる
大切な
想い出