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禁断兄妹

第78章 恐れずに進め



思いがけない提案に私もお母さんもびっくり
お兄ちゃんは涼しげな表情
すごく楽しそう。


「でも、お兄ちゃんお仕事は?」


「俺は一昨年辺りから、少しづつモデル業から軸足を移し始めているんだ。だからかなり自由がきく」


お兄ちゃんは
ランウェイや広告のモデルも勿論続けているけれど
モデルエージェントやセレクトショップの運営、自身のブランドの立ち上げといった
実業家としての活動に少しづつ軸足を移していると
教えてくれた。


「モデルにはどうしても旬があるからね。ランウェイは特にそういう世界だ。
 モデルとして叶えたかった夢は全て叶えたし、これからは若くて才能のあるモデルやデザイナーをサポートしたり世に出していくような仕事がしたくてね。
 今はまだニューヨークが拠点だけど、将来的には世界中どこに住んでも持続可能なビジネスにしていくつもりだ」


「すごい、色々先のことを考えてるのね。さすが柊だわあ‥‥」


お母さんは感心したようにほーっと息を吐く。


「今回の萌の話も俺にとっては想定内だよ。短期間じゃなくて年単位の留学だとしても、俺は全面的にサポートできる。金銭面も何も心配しなくていい」


「お兄ちゃん、じゃあ例えば、例えばだけど、音大を卒業したらパリの音楽院に行きたいって言っても、大丈夫だよってこと?お兄ちゃんが一緒に住んでくれたりするってこと‥‥?」


「Oui, Mademoiselle」


お兄ちゃんはあでやかに微笑んだ。


「わあ‥‥」


すごい


「萌がどれほど力いっぱい飛び上がっても、どんなに高いところから落っこちても、俺がいる。大丈夫だから、何も心配せず思い切りやってみなさい」


「はい‥‥っ!」


「ありがとうね、柊‥‥巽さんも喜んでると思う。私泣けてきちゃった」


お母さんがティッシュを取りに席を立って
私とお兄ちゃんは
またそっと
視線を結んだ。

優しく細められた瞳は
包容力に満ちて
抱き締められているかのよう。


「世界を見においで、萌。俺はいつでも両手を広げて、待っているから」


その言葉に
七年前の
両手を広げたお兄ちゃんの姿が
水面に広がる波紋のように
胸に広がった。

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