
禁断兄妹
第78章 恐れずに進め
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「では、カンパーイ!」
三人でカチリと合わせたワイングラス
ルビー色が揺れる。
和虎さんとママのお店で会ってから数日後の
一月初旬
私はたかみちゃんとタカシ先輩と開いている恒例のご飯会で
お洒落なカフェレストランに来ていた。
たかみちゃんとは二人でよく会っているけれど
こうして二、三か月に一度はタカシ先輩を交えて
三人でご飯とお喋りを楽しんでいる。
「今回のお店チョイスは先輩ですよね。ここ、すっごく素敵ですね!インテリアとか家具とかめっちゃ可愛い!」
「西川は絶対こういうの好きだと思ったよ。店を決める時、西川の喜ぶ顔が思い浮かんだ」
「本当は萌ちゃんの顔が浮かんだんですよね?」
「ばれたか」
冗談冗談、と涼やかに笑うタカシ先輩
まだ在学中ながら期待の若手指揮者として今や注目の人
でも親しみやすくてユーモアの溢れる人柄は変わらない。
「前にランチで来て、その時はオムライスを食べたんだけどすごく美味しかったし、雰囲気も良かったから三人のご飯会にいいなと思ってたんだ」
タカシ先輩が予約してくれたカジュアルなフレンチのお店
洋食メニューも色々とあるみたい。
白を基調としたシャビーシックなインテリアがとても可愛い。
「さっき萌ちゃんとも可愛いねーって話してたんです。ね!」
「あ、うんっ」
「一ノ瀬、今日体調悪いのか?なんだかぼーっとしてないか」
「え?」
「実は私もちょっとそう思ってた。表情とかもぽわーんとしてるなって」
「風邪もひいてないし体調は全然普通なんだけど、お正月ボケかな」
お兄ちゃんがニューヨークに帰ってからずっと
ぼんやりしてしまうことが多いのだけれど
このお店に来てから
そのぼんやり感は増していて
「もし体調が悪いなら、無理しないで言ってくれよ。飲み物も、ノンアルコールに変えたら?」
「先輩、相変わらず紳士っ」
「あ、本当に大丈夫なんです。でも大事を取って、アルコールはこのワインだけにしておきます」
ぼんやり感というか
既視感
初めて来たはずなのに
覚えてる
懐かしいの
すごく
