
禁断兄妹
第78章 恐れずに進め
「俺も西川に同感だな。
柊さんとあんまり会えないのは一ノ瀬も同じなんだから、ちゃんと時間を取って色々話をしたりしたほうがいいと思うよ」
「そうですね‥‥今回はあんまりでしたけど、次は」
火照りそうになる頬をさりげなく押さえながら
頷いた。
タカシ先輩は
私がお兄ちゃんとコミュニケーションを取れているかを
気にしてくれる。
それは七年前
お兄ちゃんがニューヨークへ旅立つ時に
皆で空港へ見送りに行った時から。
タカシ先輩が
『もう一度一人で柊さんと話しておいでよ』って
背中を押してくれたお陰で
私はお兄ちゃんに素直な気持ちを伝えることができた。
あの時タカシ先輩は『フェアじゃなかったと思って反省したから』というようなことを言っていた。
とにかくあの時のことは
今も本当に感謝している。
「───俺飲み物を頼もうと思うけど、二人は?」
「私も頼みたいです!萌ちゃんは?ノンアルコールだね」
「えっと、あ、ジュース‥‥」
ジュース
何か果物の
贅沢な
甘い
「おーい、一ノ瀬?」
「えっ、あ、すみません、まだちゃんとメニュー見てない」
「萌ちゃんホント大丈夫?」
「あはっ、ごめん、春だからかな」
「まだ一月だぞ」
ジュース
胸に広がるときめき
嬉しさ
無意識に記憶を手繰ろうとして
また心が今を離れ
漂ってしまう
