
禁断兄妹
第78章 恐れずに進め
楽しい時はあっという間で
そろそろお開きの時間
たかみちゃんが化粧室へ席を外し
私とタカシ先輩も帰り支度。
「一ノ瀬。今日、時々ちょっと変だったけど、本当に大丈夫か?」
「ご心配かけてすみません。なんだかぼーっとしちゃって。春だからかな」
『春だからかな』という言葉を
今夜は三人で何度も言い合って笑ったけど
先輩はもう笑わなくて
「一ノ瀬がぼんやり上の空だったり、物思いにふけっていると、気になるよ。すごく気になる」
「すみません‥‥」
「謝るようなことじゃないよ。俺が勝手に見て、そう感じてるだけだから。
何か悩みとか気になることがあるなら、俺で良かったら相談に乗るからな」
「はい。ありがとうございます」
先輩は優しい
ずっと変わらない
「なあ、一ノ瀬」
「はい」
「俺、やっぱり一ノ瀬のこと、好きだ」
タカシ先輩がそう言ってくれるのは
もう何度目のことだろう
「まだ、駄目かな」
「ごめんなさい‥‥」
私がそう答えるのも
もう何度目だろう
