
禁断兄妹
第78章 恐れずに進め
家に帰ってきた私は
まだ起きていた翼の相手を少ししてから
自分の部屋へ
カーテンが開いたままだった部屋の中
蒼い月明かりに誘われるように
私は窓を開け
バルコニーへ出た。
見上げれば
蒼銀に輝くお月様
冷たい風が頬をなでる。
───一ノ瀬には、記憶を取り戻そうっていう気持ちは、もうないのかな───
───‥‥あります‥‥───
不意に胸に散った煌めきは
スノードームのように
今も胸の中を舞い続け
あのお店で感じた既視感の余韻は
いとおしく
懐かしく
私を包んでいた。
私はきっとあのお店で
キラキラと輝くような幸せなひとときを
過ごしたことがあるんだろう
それはいつ
誰と
どうしてそんなに幸せだった‥‥?
───わからないって諦めずに、なんでも掘り下げて考えてみるといいわ。
自分の深いところへ降りて行って、本当の気持ちを見つめてみるの───
私は
そっと目を閉じた。
瞼越し
月明かりが胸の中に
差し込む。
私は
気づき始めている
ううん
本当はずっと前から
気づいていたのかも知れない
七年前に失った記憶の中に
全ての答えがあるんじゃないかって‥‥
