禁断兄妹
第79章 つがいの鳥①
「やっとここまで来たなあ、由奈」
「うん」
「疲れたか」
「少し。でも大丈夫」
「そうか」
粋な浴衣姿で腕を組み
満足そうに頷く臨一朗
式を終えた疲れも見えず
とても嬉しそうだ。
いつもは額を見せるように上げている前髪が
お風呂上がりのままで
凛々しい眉毛の上に散っていて
いつもより幼く見える。
「うちの風呂はどうだった」
「うーん。広いし窓があっていいと思う」
「はは、そうか」
顎のしっかりとした丸顔
目鼻立ちがはっきりとしていて濃く
強面に見せる為か口周りや顎にひげを生やしている。
こうしてよく見ると
臨一朗は美男子の部類に入るだろう。
たわいもない会話をしてから
臨一朗は少し真面目な顔になった。
「由奈。お前がどうして神楽に嫁ぐ気になったのか、俺は会長から聞いて全部知っている。知っていたら嫁にはもらわなかったのに、という事態にならないように会長が事細かに教えてくれてな。
だから俺はお前がここへ来るまでの一切合切を知っている。隠し事や嘘や強がりは不要だ」
「うん」
「俺は昔からずっと、ずっと、お前を嫁に欲しかったんだ。知ってるよな。
だからお前に何があったろうと咎める気も責める気もない。今ここにいてくれれば、俺は幸せだよ」
「ありがとう」
臨一朗の言葉は
砂漠のような私の心に
少しだけ染み入った。
「今日から俺達は夫婦だ。由奈は神楽の人間だ。霧島のことは忘れて、神楽の人間として生きてくれるか」
「うん」
忘れるとか忘れないとかじゃなくて
もう私には
戻るところも
行くところもない
臨一朗の言葉にも
全てYESと言うしかない
今の私には自分の意見も希望も
ないけれど
「そうか。安心したよ。
霧島組とはこれからも良好な関係を築いていくつもりだが、こちらの情報が抜けてはたまらないからな」
臨一朗は
ここでの生活は何不自由ないものにする
炊事洗濯も通いの者がいるから一切しなくていい
ここで好きなことをして楽しく暮らせ、と言葉を続ける。
実家や霧島組に戻ったりして欲しくないんだろう