禁断兄妹
第79章 つがいの鳥①
「うん。わかった」
霧島組の組長である実家の両親は義理の父母で
昔から情がない
会長のおじいちゃんは実の父親で私をとても可愛がってくれていたけれど
こうして神楽組に放り込まれてしまった今
今までの親子の情が
虚しいものだったように思える。
今の私はただ
そっと
じっと
していたいだけ
「由奈は神楽の人間として、俺と一緒にここで生きてくれればいい。ずっとな」
「うん」
「約束だぞ」
臨一朗は晴れやかに微笑んで
小指を立てた手を私へと伸ばした。
私は頷いて
自分の小指を絡ませた。
男性にしては華奢で小さな手
遠い日の臨一朗を
思い出した。
「ゆーびきーりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます‥‥」
言い終えた臨一朗の指に
私を引き寄せるように
少し力がこもって
ああ
このままキスされて
抱かれるんだな
そういえば
臨一朗とは
まだキスもしていなかった
目を伏せて
黙ってその時を待っていた私の耳に
「由奈ちゃん」
嬉しそうな臨一朗の声
ちゃん付け‥‥?
それもどこか懐かしい喋り方
思わず目を開き
臨一朗を見つめた。
「これからおうちでは由奈ちゃんって呼ぶからね。リンは自分のこと、リンって言うからねっ」
瞳を輝かせている臨一朗の口から
幼稚園児のような喋り方
表情までが無垢であどけないものに変わっていて
私は一瞬にして血の気が引き
肌が総毛立った。