
禁断兄妹
第79章 つがいの鳥①
「こんな世界で生きていけないって思って、中学生の頃に家出をしようとしたの。でもね、リンが家出を真剣に考えてた時、うちの組の幹部がお金持って逃げたことがあったの。そいつ、すぐ探し出されちゃってね。ぐるぐる巻きにされて、お父さんが先頭きってボコボコにしてた。裏切者はこうなるんだ、よく見とけ、みたいな。それ見ちゃったら怖すぎて、絶対逃げられないと思った。
家出がダメなら死のうと思ったりもしたけど、痛いし怖いしどうしてもできなくて」
リンは弱虫だからね、と
寂しそうに笑う。
「何から何まで嫌で怖いのに、逃げることも死んじゃうこともできなくて、もうリンは神楽の跡継ぎとして生きてくしかなかったんだ‥‥」
嫌だ
怖い
この二つだけの
臨一朗の世界
「由奈ちゃん、おてて止まってる」
「あ‥‥ごめん」
臨一朗は子供のような瞳で
私を見上げる。
いつもは縦皺を刻んでいる眉間から
力が抜けていて
くりくりとした大きな瞳
「由奈ちゃん、おひざ痛い?重い?」
「少し」
「ごめんね。じゃあ一緒にごろんしようね。由奈ちゃんのきれいなお顔が見えるようにね」
私達は指を絡めたまま
向かい合わせになるように
ベッドに横になった。
キングサイズのベッドの真ん中
身を寄せ合うように
「由奈ちゃん、リンのことびっくりした?キライになった?」
「ううん。別に」
最初は確かに驚いたけれど
嫌悪感はなかった。
臨一朗の半生は
私と似ている
家出したいとか
死にたいとか
私と同じ
