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禁断兄妹

第79章 つがいの鳥①



「子供はまだか、まだかっていつも言うだろうし、何年もできなかったら不妊治療しろとか体外受精しろとか言うかも知れない。神楽の人間はみんな怖い人だからね、子供ができない嫁なら追い出そうとするかも」

 
そうか
そういうことなのね

私は
臨一朗の考えていることが
わかってきた。


「普通の女の人ならきっと我慢できないだろうし、耐えられない。
 耐えられるのは、由奈ちゃんしかいない。リンはずっとそう思ってたの」


仮面夫婦
いけにえ
防波堤

そんな言葉が
浮かんだ。


「由奈ちゃんは誰よりも強くてきれいだから、子供ができなくても『それが何か?』みたくツーンとしていてね。
 リンは子供ができなくても由奈を心から愛してるから関係ない!ってテイでいる。
 実際ずっと由奈ちゃんだけを好きでいるし、ちゃんと守るからね」


「ずっと子供がいないままで、跡継ぎはどうするの?」


「養子とかは絶対もらわないよ。誰かやりたい人がやるような形に変えるの。組長代理や副組長を昇格させるとか、方法はあるでしょ。
 神楽の直系はリンの代で終わりにするの」


確か臨一朗の父親で六代目
ここまで続いてきた老舗極道がそう簡単に変わるとは思えない
道は険しいように思える

私がそう言ったら


「うん。だからね、リンは早く死んじゃいたいって思うの。でも怖くて自殺できないから、誰かリンのこと撃ちに来たらいいのにって思う。痛いのは嫌だから、ちゃんと一発にして欲しい」


「リン君‥‥」


「由奈ちゃんは未亡人だね。その時は神楽を離れていいからね。お金をたくさんあげるようにしておくから、どこか好きな所へ行くといいよ」


臨一朗は私と同じ二十歳なのに
もう死を待ち望んでいる


「でもリンが生きてる間は、ここにいてね。
 指切りしたからね。神楽の人間としてリンと一緒にずっとここで生きるって、約束したからね」


───由奈は神楽の人間として、俺と一緒にここで生きてくれればいい。ずっとな───


神楽から逃げられず
神楽の中で生き
神楽の中で死を待つ臨一朗

絡めたままの指は
臨一朗と私を繋ぐ


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