禁断兄妹
第80章 つがいの鳥②
和虎君からの紙飛行機を受け取った日の夜は
神楽家の一階で
三世帯が揃っての夕食の日だった。
コミュニケーションを深める為にと
週に一度は会長夫婦が
昼食や夕食を一緒に取ろうと呼びかける。
普通であれば微笑ましい大家族の食卓
でも私がここへ嫁いで来てからというもの
話題と言えば必ず子作りに関することだから
私は石にでもなった気持ちで
座っているだけ
紙飛行機に書かれていた内容に
心が奪われていて
食欲もなかったけれど
行かないという選択肢を
私には与えられていない。
「まー由奈ちゃん、もう食べないの?もっと食べて栄養つけなさいって言ってるでしょ。だから子供も授からないのよ」
大姑が言う。
「はい、頂いています」
「本当いつまでモデルさんのつもりよ。神楽の嫁の自覚あるの?」
姑が言う。
女二人のずけずけとした嫌味な物言い
慣れてはいるけど
年々ひどくなる。
「ばあちゃんもお袋も、由奈にそんな言い方はやめてくれと言ってるだろう?自分達が太ってるひがみ?」
「臨一朗、あんた達もう二十七なのよ。いい加減子供を作りなさい。何回言わせるの」
「まだ二十七だろ。俺は美しい妻とまだ二人きりでいたいからな。なあ、由奈?」
隣に座っている臨一朗が
私の顔を覗き込んで微笑み
箸に取ったおかずを
あーん、と私に食べさせる。
「はは、一口だとちょっと大きかったな。リスみたいで可愛いな」
直情型の『リン』と違って
表向きの臨一朗は冷静で計算高い
家族と対立することは不利だと考えているようで
いつも柳に風といった様子で
角を立てずにやんわりと話をはぐらかす。
「冗談じゃないよ、まったくいつまで新婚気分なんだい」
「いつまでも新婚気分でいたいね。仲が良くて何が悪いのか‥‥もう一口食べるか?いらない?ははは」
臨一朗は
おしどり夫婦を強調する為もあって
人前ではこうして仲睦まじい様子を見せつける。
実際に臨一朗は異常なまでに私を熱愛し
束縛し続けていた。
「お前達まだ避妊してんのか。するなとこの前も言っただろうが」
「直接的過ぎるだろ、親父。飯の席で話すことじゃない気がするけど」
「作ろうと思ってすぐできるもんじゃねえ。お前らいい加減にもう作れ。何度言ったらわかる」