禁断兄妹
第80章 つがいの鳥②
臨一朗はおどけたように首をすくめて両手をあげ
やれやれといった表情で私を見る。
どんな言葉に対しても
余裕のある態度を崩さず微笑を浮かべる臨一朗
でも瞳の奥は
笑っていない。
「由奈もな、いつまでも人形みてえに臨一朗にハイハイ言わんで、ちったあ子作りに励めよ」
「はい」
この針のむしろに七年間
すました顔で
座り続けてきた。
もう慣れている
慣れている
「お前ら本当は付けねえでやってるけど、できねえだけなんじゃねえのか?あ?」
「じいちゃんまでここで下ネタかい?俺を不能呼ばわりするのはやめて欲しいな。
子供は嫌いだし、ギリギリまで作らなくてもまだいいと思うけど」
「何バカ言っとるか。お前か由奈かどっちかに原因があるんじゃねえか?病院で一度調べてこい」
「はいはい、その話は聞き飽きたよ。と言うよりも、直系は俺で終わりでもいいと思うけどね。他の組のように、誰か有能な奴を昇格させるやり方のほうがうまくいくと何度も───」
「臨一朗、お前冗談もいい加減にしろよ」
「神楽を潰す気か?この馬鹿が!」
まだ子供はいらないから避妊を続けている、という話は
七年という時の中で
限界を迎え始めていて
臨一朗は
直系は俺で終わりでもいい、という方向へ
少しづつ舵をきり始めているけれど
いつも怒りを買うだけで
全く相手にされずにいる。
「さて、由奈、食べ終わったか?行こうか」
「おい、臨一朗」
「ごちそうさまでした。失礼します」
立ち上がる私達に向けられる
疑念と不信の視線
いつものように手を繋いで立ち去る私達の背中に
「臨一朗は腑抜けになっちまって埒が明かねえ。べっぴん過ぎるのも考えもんだ」
「べっぴんかも知らんが、やっぱり石女なんじゃねえのか?とっとと霧島に返したほうがいいんじゃねえか?」
「このまま孕まねえなら返品も考えなきゃならんなあ」
聞こえるように
男二人の声
霧島に返す
返品
一年位前から
言われるようになった。
跡継ぎを産むことが絶対条件の神楽にとっては
当然のことだろう
繋いでいる臨一朗の手に
力と熱が
こもった。