禁断兄妹
第80章 つがいの鳥②
「はー。すっきりしたねー」
お風呂上がりの臨一朗は
いつものように嬉々として牛乳を冷蔵庫から取り出す。
「由奈ちゃんはペリエだね」
「ありがとう」
食事会後の気まずい雰囲気もなくなり
臨一朗の機嫌も
いつもと同じ状態に戻っている。
言うなら
今かも知れない
「ねえリン君‥‥」
「なあに?」
「この前の結婚記念日で、私達が結婚して、七年経ったね」
のんびりとグラスに口をつけていた臨一朗が
ふっと真顔に戻って
私を見た。
「え‥‥うん」
「私ね、あー七年も経ったんだなーって思ったの」
「うん」
じっと私の目を見ている臨一朗
「私ね、久しぶりに霧島組に行ってみたいわ」
「えっ‥‥」
大きな瞳が
見開かれた。
「おじいちゃんから顔見せろって話がいつもあるでしょう。今までリン君に返事を任せて会わずにいたけど、久しぶりに帰ってもいいかなあって思って。
去年修斗が組長になったのにお祝いも言ってないし、その挨拶も兼ねて───」
「ダメッ!」
予想以上に鋭い声が
私の言葉を遮った。
「由奈ちゃん何言ってるの。ダメだよ絶対ダメ」
睨むように
私を強く見つめる。
「結婚した時に約束したよね、帰らないって」
「確かにそうだけど、今まで一度も帰ってないんだもの。ちょっとくらいいいと思うわ」
「どうして急にそんなこと言うの?今まで一度もそんなこと言わなかったのに」
「なんとなくよ。七年も過ぎたしなあって思って、気分転換に」
紙飛行機のことは
口が裂けても言えない。
「リンのことキライになったの」
「違うわ」
「ここでの暮らしがイヤになったの。今日の食事会もひどいもんだったしね。親父とじいちゃんの言葉を気にしてるの」
「違うわ。どんな言葉にも私はもう慣れてる。
久しぶりに霧島のみんなに会いたいなって、本当にそれだけよ」
「みんな?
‥‥橘修斗に会いたくなったんじゃないの?」
臨一朗の頬が
ビリビリと震えた。