禁断兄妹
第80章 つがいの鳥②
「会いたいっていうか、組長になったお祝いを言ってもいいかなって」
「どうしても言いたいなら電話で言いなよ」
臨一朗は自分の携帯を乱暴な手つきで手に取ると
私の前に叩きつけるように置いた。
「霧島組で履歴があると思う。それで今かけなよ」
私には自分の携帯がない
電話は一階の会長夫妻のリビングにあるだけだから
この七年間
自分からどこかへ電話をしたことがない。
お店の予約が必要なら家政婦さんがするし
私は許された目的地と家とを
運転手付きの車で往復するだけ
「電話じゃなくて、直接言いたいわ」
「それは会いたいってことでしょっ‥‥!」
臨一朗の顔が
怒りとも悲しみともつかない感情に歪む
「やだよ、約束したじゃない。行かせない」
「帰ってこない訳じゃないわ。気分転換にほんの一時間くらい、時間をちょうだい」
「やだっ!」
「お願いします」
私は頭を下げた。
激情を抑えつけるような
臨一朗の息遣いが聞こえる。
「ごめんね由奈ちゃん、そのお願いだけは聞けない‥‥」
私は顔を上げた。
「私を信じてないの」
「そういうことじゃないよ」
「信じてるなら行かせて。必ず帰ってくるわ」
臨一朗は顔をそむけるようにして
私から視線を外した。
「由奈ちゃんが心からそう思っていたとしても、橘修斗はそう思ってない。由奈ちゃんを帰す気なんて更々ないよ‥‥」