禁断兄妹
第80章 つがいの鳥②
「考え過ぎよ。そんなことをしたら神楽組だって黙っていないってわかってるんだから、普通に帰すに決まってるわ」
「由奈ちゃんは何も知らないだけだよ‥‥」
臨一朗は
ふふっと肩を揺らして
自嘲気味に笑った。
「え‥‥?」
「橘修斗はな、由奈を取り返したくて取り返したくて、喉から手が出そうなほどなのさ。この七年間、ずっとな」
せせら笑うような
とげとげしい声
子供のリンと
極道の臨一朗の境界線が
崩れた
「あいつは由奈を取り返すチャンスを虎視眈々と狙ってやがるんだ。由奈が霧島に行けばもう神楽には帰さない。弁護士を立ててそのまま離婚へもっていく。
そして俺以外の神楽の人間は喜んで離婚に賛成する。霧島から神楽へ高額な慰謝料の支払いが提示されるからだ。
跡継ぎのできない嫁を大金と引き換えにできるんだからな、金の亡者達には願ったり叶ったりだ‥‥これがあいつの描いてる絵図だよ」
「まさか‥‥」
「本当だ。あいつはお前を取り返す為に、あらゆる手を打ってやがるんだ。
この七年間、定期的に俺達の行動確認をさせてるのもそうだ。離婚に有利な情報を集める為に、飽きずにコソコソ続けてやがる。こっちだってバカじゃねえんだ、ボロは出したことがねえがな‥‥」
テーブルの上で組み合わされた臨一朗の両手には
震えるほど力がこもり
表情から
声から
怒りがふつふつと沸き立っていくのがわかる。
「親父たちが由奈を霧島に返すだのなんだのと言うようになっただろう?あれも橘修斗が裏で糸を引いてやがるんだ。
『石女を嫁がせたことは霧島の恥だから、不良品としていつでも引き取る』とほざいてな。結納金を倍にして返してもいいとまで言ってやがるんだ。跡継ぎと金にしか興味のないクソ親父たちは、俺を差し置いて、橘修斗と結託し始めてんだ‥‥っ!」
初めて聞く話ばかり
修斗が
そんなことをしていたなんて
「あいつ一人に踊らされてんだ。あいつ一人にやられっぱなしだ。外堀は着々と埋められていく‥‥俺を孤立させて、俺から由奈を引き離すつもりなんだっ‥‥!!」