禁断兄妹
第80章 つがいの鳥②
臨一朗の感情が爆発し
両手のこぶしが殴るようにテーブルを叩いた。
グラスが飛び
中身をまき散らしながら床に落ちていく。
「『嬢はお元気ですか?』『嬢はお幸せにお暮しですか?』俺の顔を見る度バカにしたように言いやがる。幸せかって?ああ幸せに暮らしてるよ、幸せに決まってるだろうがっ!!」
再び強く振り下ろされたこぶしに
私のグラスが跳ね
床で砕け散った。
「橘修斗の思い通りにはさせねえ。会わせねえ。絶対に会わせねえ‥‥っ!!」
ひとしきりわめき散らした臨一朗の
荒い息遣いが
しんとしたダイニングに響く。
「‥‥幸せか、なんて一度も聞かれたことがないわ‥‥」
息を呑んだ臨一朗の
血走った瞳を
見つめた。
「一度もないわ‥‥」
幸せかと聞く勇気が
あなたには
ないんでしょう‥‥?
「っ‥‥」
泣き出す
そう思ったほど
見開いた瞳を真っ赤に潤ませて
あえぐように息をする口元を
ぶるぶると震わせて
「‥‥俺の前でこの話は二度とするな‥‥」
臨一朗はよろめきながら席を立ち
ダイニングを出て行った。