禁断兄妹
第80章 つがいの鳥②
喧嘩をしてから二日後の夜に
やっと臨一朗は
家に帰って来た。
「ただいまー」
いつもの『リン』の
顔と声だった。
「おかえりなさい」
「うん、ただいま」
私達は
黙って向かい合った。
瞳に
瞳が映った。
「どうして霧島に行かなかったの?」
「えっ」
「昨日も今日も、リンいなかったよね」
そうか
全然思いもしなかった
「由奈ちゃんはそういうところがあるよね。ちょっとおバカさんなんだよね」
「そんな。だって、黙って行ったら、リン君が何するかわからないじゃない」
「ふふ、そうだね。
由奈ちゃんを泳がせて、霧島に行ったらライフル持って乗り込んでやろうと思ってたのに、肩透かしだった」
本気とも冗談ともつかない表情で
臨一朗は笑った。
「あまり寝てないんじゃない?もう寝ようね」
ネクタイをほどきながら
すたすたと自分の部屋へ向かう。
私は慌ててその後を追った。
「リン君、私黙って行きたくないの」
「まだ霧島に行きたいって思ってるの?」
臨一朗は
自室にあるソファに脱いだスーツを放り
ウォークインクローゼットから部屋着や下着を取り出す。
「ちゃんと帰ってくるわ。私を信じて行かせて欲しいの」
「もうその話はしないでって言ったじゃない」
「リン君」
「シャワー浴びて来るから、そこどいてね」
臨一朗はドアの前に立つ私に
首を傾げて微笑んだ。
「嫌。いいって言うまでどかない」
「ねえ、どうしてそんなに必死なの」
「私はこういう人間なの。一回こうしたいって思ったら、どうしてもそうしたいの」
私の言葉に
臨一朗が楽しそうに笑う。
「リンもそうだよ」