テキストサイズ

禁断兄妹

第82章 つがいの鳥④



「えっ」


息が止まった


「もうリンのサインはしてある。後は由奈ちゃんが書いて出してね」


離婚



「由奈ちゃんの荷物は後で全部霧島に送るからね。リンが言い出した離婚だから、慰謝料もちゃんと払う。後で好きな額をうちの弁護士に言ってくれればいいよ」


離婚

身体中が震えて
手のひらから封筒が落ちた。


「ここからはタクシーで霧島に帰りなね。もう呼んであるからすぐ来ると思う。せっかく帰って来たのに、また車に乗せることになっちゃって、ごめんね」


「リン君!!」


どうして

どう
して


「私はちゃんと帰って来たわ。これからもリン君と暮らそうと決めてるからよ。なのにどうして?!本当は怒ってたの?!無理やり霧島に行った私を許せなかったの?!」


どうして
わからない

朝は普通だったのに
こんなに
突然


「この前は怒ったりしたけど、もう怒ってないし、根に持ってもいないよ」


「じゃあどうして?!ずっと仲良しでいようねって言ったのはリン君じゃない!ずっとひとりぼっちで寂しかったって、私が来るのをずっと待ってたって!!一人にしないでねって!!」


「うん。結婚した時にリンが言ったことだね。覚えてるよ。今も心からそう思ってる」


「今もそう思ってるのに、どうしてリン君が先に約束を破るの?!どうして‥‥っ?!」


身体中が燃えるように熱くて
息が切れて
涙が
零れて


「ごめんね由奈ちゃん‥‥」


臨一朗が
私の頬を撫でた。


「由奈ちゃんはリンに影響されて、いつの間にかリンと一つになっちゃったんだ。
 由奈ちゃんには由奈ちゃんの良さがあったのに、結婚してから、どんどん消えていっちゃった。リンはそれをわかっていたけど、どうすることもできなくて、ただ由奈ちゃんを失うことが怖くて、縛りつけることしかできなかった。本当に、ごめんね」


ほろ苦い微笑み
滲んで
揺れて
よく見えない


「由奈ちゃんはもう自由になって、由奈ちゃんらしく生きてね。
 今までよく耐えてくれたね。本当にごめんね。そして心から、ありがとう」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ